研究科長からのメッセージ
私たちが大学で扱う知識や事象は、高校までの教科書におけるように事実であることが保証されている、というわけではありません。何が正しいのかわからないことも多い。そして私たちはそのわからないことがらに注目します。何がわからないのか、どういうところがわかっていないのか、まず突き止めようとする。それが学問のあり方だと思います。私たちの周りにはわからないことがたくさんあって世界は混沌。どうしていいのかわからず、途方に暮れることもしばしばです。
ですが学問とはありがたいもので、その混沌とした世界の眺め方を示してくれます。自分一人ではおそらく得られなかった視座と方法を与えてくれる。混沌の中から秩序を見出す手順がときには見つけられるわけです。そういった確率を少しでも高めるためには、一人きりで学ぶのではなく、志を同じくする者たちと議論することが役立ちます。大学院はそういうところだと思うのです。教員やほかの大学院生と視座と方法についても議論してみませんか。きっとさまざまな発見があると思います。
そして議論を進めていくとさらに気づくことがあります。学問が授けてくれる視座と方法はたいへんありがたいものですが、同時に世界の見方を制限してしまいます。同じ地形でも眺める場所とその方法が異なれば違った景色に見えることがあります。世界をよりよく理解するためにはそういった視点の違いからくる「見え」の違いについても意識することが重要です。少しでも生産的に考えられるようになるために、一緒に考えてみませんか。
大学院 外国語学研究科長 山口 治彦