神戸市外大

日本人がいない、バスもない。
そんな留学先で、
じぶんがシフトしたかった
暮らしを見つけた。

影田恵伶奈 外国語学部 第2部英米学科 2017年度入学/2022年度卒業

 わたし自身、これまで英語を習ってきて、得意な科目だという自負はありました。でも、得意で終わるのではなく、英語をツールとして使いこなしたいと思い、神戸市外大に入学しました。そして、いつかは暮らすなら田舎が良いなあという、軸がありました。

オーストラリアでの1年間の有機農業留学。

 田舎で暮らしたいという将来の希望もあり、1年間休学してオーストラリアで有機農業留学をしました。留学先は、オーガニックファーミングを学べる州立の専門学校です。循環型ファーマーカルチャーの授業が座学と実習の両方であるところが良いと思い、入学しました。座学だけでなく、農作物を育てることもやってみたかったんです。1年間座学と実習で学びながら、地元の有機農家さんでお手伝いをしました。実感として、自然の暮らしというか、自然相手の暮らしは、大変だと思いました。

車でドライブがてら見に行ったオーストラリアの夕陽

店頭に年中同じ野菜が並んでいるって、なんか変だ。

 有機農業を学ぶための留学を志したのは、じぶんの暮らしの中で感じた疑問や気づきがもとになっています。大学に入学し、一人暮らしをはじめ、自炊をするようになり、スーパーへ買い物に行くようになりました。ある日、ふと、“年中同じ野菜がスーパーの店頭に並んでいる”って、変じゃない??と、違和感を覚えました。そのころ、元来カラダが強い方ではないわたしは体調を崩しがちになっていました。薬ではなく食生活で改善したいと思うと、食材がとても気になりだしました。そして、四季を感じる旬の野菜がいつも身近にある暮らしにシフトしたいと、思うようになっていきました。

留学先の友だちに作り方をレクチャーしながら一緒に作った餃子とサラダ

オーストラリアの片田舎での
ひとり暮らしは、けっこう辛かった。

 留学した学校があったのは、オーストラリアでもかなりの田舎でした。バスもない、日本人となんかまったく出会わない。そんな環境でした。とにかく、道で日本人と出会ったことがなかったですからね。行ってすぐは、まだ話すチカラがなかったので、現地の方を相手にお家やクルマを探すのは大変でした。学校の友人や先生の助けを借りながら、なんとか生活に困らない程度の環境を整えていきました。

留学中にできた友だちと土壌改良のワークショップに参加

留学中にできた友人皆と畑にて

雨の降る中、専門学校でお世話になった農園担当の先生と

農園で飼育している豚たちを世話する

そこには、オーガニックが暮らしのベースにあった。

 学校生活は午前中が座学、午後は実習という毎日でした。座学で土の構造などを学び、土によって植物がどう育つかを理解していきます。実習では毎日3?4時間程度オーガニック農家で見習いをします。野菜や家畜を育てるのを手伝ったり、ハチミツなどを加工したり。家畜を一頭、鶏を一羽育てるだけでも、苦労が多くて、それはもう大変です。生き物を飼う責任を痛感させられました。

実際に土を使い、土壌分析の方法を習う専門学校の授業

実際に種から野菜を育てる専門学校の授業で野菜の種を植えた日

専門学校の畑での作業に友だちとカートで行く途中

友だちと専門学校の畑にてニンニクを収穫

専門学校で野菜の肥料になるコンポストを作る作業

専門学校の最終日に学校の前で撮った記念写真

わたしの人生のターニングポイントになった。

 現地では、売られている食材の60%くらいがオーガニックという印象でした。神戸よりもはるかに田舎なんですが、旬の有機野菜や自然食品が並ぶマルシェが毎週住まいの近くで開催されていました。家族やじぶんたちの健康と自然環境の保護のために、オーガニックが暮らしのベースにあることを実感できました。また、オーガニックは文化であるということも理解できました。
 日本ではまだまだ限られたひとしか選択できない有機栽培や自然栽培の野菜が、ひとびとの日常生活の中に当たり前の選択肢としてあることを肌で感じることができました。自生する植物や野生動物を保護する活動も活発で、若いひとからお年寄りまで幅広い年代の方が参加していました。みんなが自然とともにある暮らしに関心を持ち、それ自体が文化として定着していることを、じぶんの身をもって実感できたことは貴重な経験でした。
 オーストラリアでの生活では、食生活が変わったことで薬に頼らなくなったのは大きな変化でした。肌の調子や頭痛が改善されました。それと、もうひとつ。日本語を一度も話さなかったのも良い修練になりました。オーストラリアでの1年は、わたしの今後の生き方を大きく変えるきっかけになりました。人生のターニングポイントだったと言っても過言ではないでしょうね。

地域の農家さんで収穫してきたにんにくの皮剥きのお手伝い

地域の農家さんで野菜の苗を育てる作業をお手伝い

新規就農や地方移住をサポートする会社に入社。

 帰国後、留学時代からインターンをさせていただいていた会社に就職しました。新規就農をめざす方、地方へ移住したい方をサポートするプログラムを運営している会社です。実家の石川県でオンラインで仕事をしながら、月に一度、広島県の限界集落※「田万里(たまり)」へ通っていました。休みの日にはじぶんで畑もはじめました。会社自体は東京の原宿にありましたが、2022年から代表が田万里へ移住し、本社も田万里に移しました。

限界集落:地域人口の50%以上が65歳以上の集落

広島の限界集落「田万里(たまり)町」への移住。

 わたしも田万里に移り、米粉ドーナツ専門店と農業体験ができる宿泊施設(田万里家)の立ち上げに参画しています。現在はおもに宿泊施設の担当として働きながら、田舎での暮らしを探求する毎日です。まだまだはじまったばかりですが、週末にはたくさんの方が訪れます。訪れた方が田舎を楽しむきっかけになってくれるといいですね。
 ここでは、季節を感じられる環境を楽しんでいます。梅干しを漬けてみたり、地域の方との世間話を楽しんだり。個人的にはじぶん自身の暮らしをもっともっと充実させたいです。そして、田舎暮らしの面白さを発信したいと思っています。いま都会に住んでいる人も、みんなそれぞれどこかの田舎に“故郷”がある。その田舎が少子高齢化や過疎化で廃れていく現実をなんとなく遠くから眺めるのではなく、何も無いからこそ無限大に「面白く」「楽しく」「自分らしく」生きる余白が沢山あるよ!というポジティブなメッセージを、この田万里家を通じて発信していきたいです。

田万里家RICE DONUTオープン日
(バーの集合写真、店内の写真、ドーナツ)

大学で学んでいることと
まったく違うジャンルへ、
飛び込んでみよう。

 外大にいるひとたちは、それぞれがじぶんなりのビジョンや「こうなりたい」という方向性を内に秘めたひとばかりだったと思っています。いま大学で学んでいることやこれまでやってきたこととはまるで違うジャンルでも、怯むことなく飛び込んでみることです。わたしの場合は“農業”でしたが、いままで知ることもなかった世界が広がることを、わたしは留学経験から学びました。知らない世界には、何かが待っています。わたしは、やりたいことに出会いました。挑戦してみたいけど怖い。そんなひとに、休学の1年間は有効だと思います。迷っているひとほど、踏み出してほしいです。探究心をみたしてくれる何かを、在学中にぜひ見つけてもらえたら良いなあと、思います。

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